2013年05月11日

グレイプバイン(GRAPEVINE)『愚かな者の語ること』全曲レビューしてみた

今作『愚かな者の語ること』は、雑誌などのインタビューでメンバーは、映画というよりは短篇集みたいになったと答えていました。

まさにその通りだと思いました。
アルバムトータルでの雰囲気重視と言うよりは、一曲一曲の個性やパフォーマンスを存分に引き出して作られたものであるとの印象です。
一曲一曲がきちんと独立して構えています。

そうであるがゆえに、10曲という収録曲数はあるいは曲順は非常にちょうどいいと思いました。
個性の強い楽曲の集まったアルバムですが、次の曲はスタイルの違う曲、また次も違う雰囲気、というふうに曲が迫ってきますので、途中で飽きたりだれることなく聴き通すことができています。
聴きこむことによって新しい発見があり、味が出てくるアルバムですね。

1. 無心の歌
これはもう大変メロディアス。一曲目からやられます。
全部こういったキャッチーでグッとくる曲でアルバムを作ったらものすごい傑作になるんじゃないかと思ってしまいますが、それをやってしまったらもはやGRAPEVINEじゃないですからね。
個人的には、昔の「光について」しか聴いたことないという人にも積極的にアピールできる曲なのではないかと思います。
というか、そういうことを意識して作ったのかな。

2. 1977
先行シングルになっていた曲で、イントロのピアノが印象的な曲ですね。
とても綺麗な曲なのですが、さらりと感情が抑えられていて、構成もとてもコンパクトな仕上がりになっています。
なので、もうちょっと聴いていたいと思い、ついリピートしてしまいます。
歌詞の「ここで再会するような大団円はない けど他に展開はないのかい」には痺れました。


3. コヨーテ
先の2曲とはガラリと趣きが変わります。
本当にガラリと違うので「この流れでこれ?」と、とても驚きました。
メロディーというよりはグルーヴやノリに重きが置かれた曲です。
ライブでは盛り上がりそうですね。

4. なしくずしの愛
まさかGRAPEVINEが「愛」なんて言葉をタイトルにつけるなんて!でお馴染みの曲です。
アルバム内で最初に公開された曲ということで、名刺代わりといったところでしょうか。
綺麗なメロディー、音が次第に厚みを増していく構成、間奏で爆発するギター。
変拍子なのですが、なぜ変拍子なのかはわからないです。変拍子じゃなくても良かったような。。
ともあれ、今のこのバンドが何をしたいのかをうかがい知ることのできる良曲だと思います。


5. われら
後半からドラマティックで壮大に展開します。
アルバムが短篇集であるとすれば、この曲は、「始めに謎が提示され、それを解決するために驚くような劇的な展開をし、最後にすっきり解決」というミステリーみたいなものではないかなと思います。
曲自体がミステリアスということではなくて、その構成が、ということです。

6. 迷信
からっとした印象の曲です。
メロディーだけ取ってみると、とてもポップなものなのですが、そこにひねくれたアレンジが施されています。
そのミスマッチ感というか、一筋縄じゃ行かない感じが、中毒性を高めるのだと思います。
一聴すればこんなに爽やかな曲なのに、途中は70年代プログレみたいになっています。

7. うわばみ
これはもうふざけて作ったとしか思えない。肩の力を抜いてわいわい作った感が伝わってきます。
サージェント・ペパーズ症候群をGRAPEVINEが再現してみたらこうなったという感じです。
このだらっとした感じ、取ってつけたようなサンプリング素材。
実は、私はこのアルバムで一番気に入っていると言ってもいい曲です。

8. 太陽と銃声
アルバムの後半の大詰め手前という場所にふと置かれた良曲。
久しぶりの西川曲です。
今のところあまり印象には残っていないかも。。聴き直します。

9. 片側一車線の夢
アルバムのハイライトとも言っていいアップテンポの曲です。聴いた多くの人の印象に残るはずです。
ただ相変わらずアレンジがひねくれているというか、「ヒット曲みたいには決してしない」という意志が伝わってきますね。
歌詞もとてもよいです。

10. 虎を放つ
締めを飾るに相応しいナンバー。
GRAPEVINEはアルバムの最後の曲の雰囲気作りがとても素晴らしいのですが、今作でも期待を裏切りません。
スローテンポで、永遠に続くような情景。感動。


前作『真昼のストレンジランド』は「映画のような作品」とよく言われていましたが、当時、それは大好きなアルバムでしたが、その部分に関しては「映画って言われても…」といまいちピンと来ませんでした。
しかしながら、今作『愚かな者の語ること』は、一篇一篇が極めて個性的で明らかに「短篇集」です。
今作を聴いてみて、「そう考えると、確かに『真昼のストレンジランド』は映画のようだった」と改めてはっきりと認識できました。

もちろん、優劣はありません。どちらも素晴らしい作品です。

また、敢えて過去作と比べるなら、『Twangs』に近い趣きなのではないかと思います。
『Twangs』は賛否両論を巻き起こした作品ですが、私は大好きです。1枚選べと言われたらこれを選ぶかもしれない。
何か新しいことをやってやろうという程よい実験性と、曲ごとのはっきりとした個性。
実験性などというと難しく感じられるかもしれませんが、GRAPEVINEという根っこの部分のスタイルはしっかりしているので安心して聴けるのです。

色々書きましたが、『愚かな者の語ること』は、決して大げさな物語ではないけれど、いつも寄り添ってくれるようなお気に入りの作品になりました。


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posted by ミヤオ at 14:44| Comment(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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